青砥十さん著「後輩書記シリーズ」のご紹介

青砥十さんの「後輩書記シリーズ」といえば、創作文芸界隈で非常に話題ですので、ご存じない方はいらっしゃらないのではないかと思います。累計5000部を超えつつある圧倒的人気を誇るゆるふわ青春エンタメ小説が何と舞台化! ということで僕も拝見してきました。非常に面白く、度肝を抜かれましたね。まさに最高の舞台がそこにありました。収録などはされないその日限りの超プレミアムな舞台として、後輩書記シリーズのファンならぜひ押さえておくべき豪華な体験ができました。

舞台化されたのは「後輩書記とセンパイ会計、夢魔の王子に挑む」という作品です。悪役として登場する、魅惑的な少年夢魔ドリーム一派という「DREAMproject」さんのキャラクターとのコラボのために、今回の舞台版の原作小説として執筆された経緯が、配布された後輩書記シリーズ五周年記念誌「もののけ議事録」に書かれていました。物の怪エンターテイメント企画「妖-AYAKASHI-」さんという劇団の持ちキャラが、座長で役者でもある槻城耀羅さん演じる少年夢魔ドリームなんですね。

舞台の完成度と技量は非常に高く、まさに後輩書記シリーズの雰囲気そのものという感じなのですが。それに加えて、今回の舞台ならではの夢魔一派のキャラとの融合がさらに作品の世界観を広げていました。いやー非常に面白い舞台ですよこれは。何といっても演者の皆さんがそれぞれ魅力的に躍動感たっぷりに演じられていて。観ていて自然と惹き込まれて楽しい気分になりました。原作のテイストを継承しながらさらに深く舞台という一期一会の時間と空間で表現してるのがすばらしいです。同じ時間軸で複数のやり取りが同時進行するといった舞台という場ならではの細やかな演出も随所に込められていました。

今回の舞台の役者さん情報です。出雲ふみ役の高橋千裕さん、数井三角役の清田朝美さん、数井くんの同級生の神保健役の関根礼句さん、ふみちゃんの同級生の桐谷理科役の鈴木未恵子さん、夢魔王子の天敵でありオラオラ系神様の獏王役の飯村勇太さん、劇団の座長でもある少年夢魔ドリーム役の槻城耀羅さん、夢魔王子を慕う魔族娘3人組のレディ役の瑞樹トオル(氷条イリヤ)さん、フラン役の奈古あゆ未さん、ガーネット役の赤岩かほさん、アイドル兼スパイの影たちことシャドウガールズのみかげ役の鮎川あずささん、こかげ役の石森理津子さん、ちかげ役のますだゆりさんです。非常に個性的なメンバーでした。

原作シリーズの雰囲気を保ちながら舞台用の新作を書けるという青砥さんの柔軟さは本当にすごいです。そう簡単なことではないです。少年夢魔ドリーム一派を魅力的な悪役として颯爽と登場させ、彼ら=非日常とふみちゃんや数井くんたち=日常とのリズミカルな掛け合いを演出し、ドリーム対獏王という超常対決を盛り上げながら、ふみちゃんと数井くんのかわいらしいラブコメ展開もあるという。盛りだくさんの豪華な内容を堪能できました。こうした楽しさこそ青砥さんらしい分かりやすい青春エンタメの極みです。劇団「妖」の持ち味の妖艶なエロスを感じさせる表現の数々との相乗効果も際立っていました。

役者の皆さんの高度な技量が一体感を作り出し、冒頭から自然に作品の世界に浸ることができました。台詞も複雑で派手な動きも多いのに安心して観ていられますし、自然である以上に本当にそのキャラそのものとすらいえる圧倒的な存在感があるのがすばらしいですね。登場人物の全員がそれぞれに輝いているところも計算し尽くされているなと。ふみちゃんのかわいらしさ、数井くんの純情さ、ドリームたち悪魔の生き生きとした悪役らしさ、そして獏王のキレキレに際立った獏王ぶり、非常にすばらしいものでしたね。改めて舞台の凄味、魅力の奥深さを思い知らされました。大成功に終わり本当によかったです。

劇場の広さも今回の舞台のような濃密な表現にはちょうどよく、役者さんの生き生きとした表情や仕草、細やかな掛け合いを間近から観られるからこその圧倒的な臨場感なんですよね。今回の舞台というコラボが生まれたのも、以前に谷中の古民家を使って開催された「後輩書記カフェ」にドリーム役の槻城耀羅さんと桐谷理科役の鈴木未恵子さんがいらしていたからだそうです。それ以前の妖怪同人イベントからのお付き合いもあるとか。座長の槻城耀羅さんが後輩書記シリーズの熱烈なファンだからこそ今回の舞台のBGMや小道具や衣装の指導までされるなど、まさに原作愛のある舞台になったといえるでしょう。

皆さんのこのすばらしい表現力、結束力とすらいえるものは、ひとえに「妖怪」という繋がりがあるからだと思っています。「もののけ市」、「妖怪卸河岸」、「深川お化け縁日」など、妖怪を題材にした数多くのイベントがあるということを、青砥さんと出会わなければ僕は知ることすらなかったかもしれません。妖怪を愛好し、妖怪を熟知している彼らだからこそ作品の魅力的でオリジナリティのある豊かな世界観が広がるわけです。前回のイベントである「後輩書記カフェ」でも存分に発揮されていました。合わせて後輩書記カフェの模様もご紹介させていただきます。こちらも非常にすばらしいイベントでした。

2014年3月8日に行われた「後輩書記カフェ」は、同じく青砥十さん開催の「後輩書記シリーズ」を題材にしたイベントです。会場は西日暮里にある古民家を改装して作られたイベントスペースである「谷中の家」で、谷中という一帯の雰囲気とも合わせて非常に趣のある佇まいでした。いかにも創作文芸という文化系のイベントにマッチしていましたね。「谷根千」という言葉があって、「文京区から台東区一帯の谷中・根津・千駄木周辺地区を指す総称」とのことですが。そういう文化的な街並みの一角だけに開催前に周辺を少し散策した「よみせ通り商店街」の雰囲気にはすでに惹かれるものがありましたね。

入り口の看板には「後輩書記シリーズ」本編の五冊の表紙と、コラボ企画の「リアルふみちゃんフォトブック」の紹介が掲載されていました。谷中の家には木材が多用され古風な街並みにマッチしていますがお洒落なデザインも感じさせます。開始時間の少し前に到着して中に入ると細やかな工夫が凝らされた「開架中学校ネームカード」が用意されていました。とてもかわいらしいカードです。室内にはイラスト担当の葛城アトリさんの挿絵を大判のポスターサイズにしたものが約30枚も飾られていて壮観でした。青砥さん自作の数井くんとふみちゃんの豪華な切り絵まであって、本当に多才なんだなと思いました。

葛城アトリさんの挿絵は登場人物たちのかわいらしさや個性的な妖怪たちの雰囲気を高いクオリティで描ききっていました。青砥さんが書き下ろした台本を使っての会話劇が始まりました。女性キャラのガールズトーク、みんなのお姉さんの銀河さんが運転する車中での賑やかなドライブトーク、弟の世界さんと姉の銀河さんの姉弟トーク、生徒会長の世界さんと会計の数井くんのボーイズトークなど。出雲ふみ役:トリガーハッピーさん、数井三角役:鮎川みみさん、花房英淋(はなふさ えいりん)役:ギアさん、屋城世界(やしろ せかい)役:UGLYさん、屋代銀河(やしろ ぎんが)役:舞山菊乃さんと豪華な配役でした。

開架中学校生徒会の雰囲気が非常によく出ていましたね。キャラの個性にマッチする声優さんを探したり作品愛のある朗読をしていただいたり。そういう努力がしっかりと実を結んでいると感じました。銀河さん役の舞山菊乃さんによる銀河さんの星や宇宙を題材にしたテーマ曲の生歌ライブと本編の朗読がありました。歌声はすばらしく、朗読は地の文から台詞まで読まれていましたがとても迫力があり情感がこもっていましたね。舞山菊乃さんは舞台のご経験もあるそうで納得です。Azellさんの作られた音楽によりさらに雰囲気が盛り上がっていました。今度は創作メンバーたちによるトークライブが行われました。

青砥さんとの出会い、企画に携わっての思い、普段の活動などが語られました。世界さん役のUGLYさんのトランプマジックも。UGLYさんはニコニコ超会議に併せて開催された超文学フリマで青砥さんと出会い今回参加されたそうです。他の皆さんも同様にいろいろなきっかけで出会い繋がりが広がっているわけです。「リアルふみちゃんフォトブック」は谷根千の街並みを舞台に謎解きをするふみちゃんという設定で、モデルの忍宮ひなさんもいらしていました。本当にふみちゃんそのものでしたね。日暮里のお菓子の「妖怪苺大福」は妖怪が口にくわえているかのように苺が。クリーミーでおいしいお菓子でした。

「和み成分100%、ゆるふわ妖怪小説、谷中に現る」とプログラムに書かれているとおり非常にアットホームなイベントでした。全編を通して後輩書記シリーズへの愛が溢れていると思いました。青砥さんの作品が世界観として広がりやすいように書かれていることを再認識しました。会話劇あり、歌や朗読あり、トークライブありと非常に盛りだくさんのイベントで和気藹々とした出演者の皆さんの様子を存分に楽しむことができました。司会の青砥さんの仕切りも非常にスムーズで堂々たるものでした。これだけのイベントを準備して完成させるのは相当に大変なことだったと思います。さすが青砥さんですよね。

それにしても創作文芸のイベントをこうして個人で積極的に主催するというのは本当にすばらしいことです。繋がりを作り出せる後輩書記シリーズの懐の深さも再認識できました。青砥さんは日ごろから各種の同人イベントに足繁く通われているので作品を購入できる機会が多くあると思います。さらに通販もされていますので興味を持った方はぜひ青砥さんの公式サイトを訪れてみてください。舞台も後輩書記カフェもどちらも非常に楽しかったです。有難うございます。ご参加された皆さん、お疲れさまでした。後輩書記シリーズのファンとして青砥さんおよびコラボされた皆さんのさらなるご活躍を願っています。